溜めず、恐れず。

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ランス・アームストロングによる第9ステージ評 【後編】「選手はヘルメットを脱ぐべきだ!」

 

トークがあまりにも濃かったため、二部に分けざるを得なかったランス・アームストロングによる第9ステージ評 後編です。

 

前編はこちら↑

 

ランス節が満載の刺激的な内容になっております!

 

 

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後編はだいたい17:21〜辺りから。

 

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ランス:

そー言えば、今日のコースレイアウトが ”クソ" だってことは、もう言ったっけ?

 

ー おいおい、落ち着けよ。笑

 

ランス:

そもそもみんな、この第9ステージのことを ”クィーンステージと呼んでいるけど、それには断固として反対だ。

確かに豪快な登り坂があったけど、その後の下り坂が中和してしまった。

 

あれを "クィーンステージと呼ぶことはできないよ。

 

クィーンステージはモンヴォントゥであり、アルプスのことだ。

 

 

ー 第9ステージを「よし!これは俺のステージだ!」と思っていたような、下りを得意とする選手はいた?

また、なぜコースを設定した者はあの超級山岳の後に、下り坂を持ってきたのだろうか。あの下り坂のせいで、ロードレースというよりX Gamesの要素が入ってしまったよ。

 

ランス:

出場選手の中でもロマン・バルデの下りはピカイチだ。

実際に彼は下りを使ってアタックに成功した。まあ最後まで持たなかったけど。

 

それにしてもあの下り坂は…

この前一緒に MotoGP(モーターバイクレース) の試合を観たよね?

23mm~25mmのタイヤで時速80kmで走るやつ。まるであのレースのようだったよ。

 

そもそも、頂上ゴールが可能な山岳が、ゴールのシャンベリーには30以上もあったのに、なんで下りと平坦を持ってきたんだろうか。

その結果ビックネームの一人(リッチー・ポート)を失ってしまった。

 

 BMCの選手はすぐにポートのサドルの位置まで下げられるように、特殊な留め具をつえていた。

 

ー あのクレイジーな下り坂を解説してよ。

集団をコントロールするためか、コースが良く視えるからなのかわからないけど、下りでフルームは先頭に立った。

キミだったらあの下りを先頭で走るかい?

 

ランス:

俺なら前で下りたいな。もちろん、ダン・マーティンも先頭で下りたかったと思うよ。

でも、もし俺がフルームだったら、ロマン・バルデの後ろをピッタリとつくよ。だって彼のホームコースだし。

 

結果的にバルデとフルームは20秒ついてしまったから、それは無理だったということだけど。

 

 

ー 話をゴール前の平坦に移そう。

キミは観戦しながらとても不満そうに観ていたよね? なぜ他の選手はフルームの前で引くのかって。

 

ランス:

あのシーンは面白かったよ。思わず笑ってしまった。

ジョージ・ヒンカピーGeorge Hincapie)からメッセージが来てさ、

 

「アスタナは一体何をしているんだい?」だって笑 

 

あの30分ほど前に、時間を戻して考えてみてよ。

フルームにメカトラがあって手を挙げたのにも変わらず、アルがアタックをした。

そしてギスギスした空気があの集団には生まれた。

 

その30分後、なんだあのすべてを帳消しにしたような協力体制は?

みんなフルームの為に走っていた。

 

フルームはルームメイト(ゲラント・トーマス)を失ってしまった。

それなのに、驚いたよ!

最後の10kmに仲間が二人いたんだ!

しかもその二人はスカイのジャージを着ていない、アスタナのジャージを着ているんだ!

 

俺にはアスタナが何を考えていたのか、全くわからないよ。

 アスタナのフグルサング(左)とアル(右)

 

ロマン・バルデなんて放っておけばいいんだ。

1着で10秒ぐらい与えてやれよ。

マイヨジョーヌはフルームだろ?ヤツに先頭を引かせて追わせろよ。他の選手はその後ろで脚を溜めてればいいんだ。

 

仮に先頭で引いたとしても、引くフリをすればいいんだ。トマ・ヴォクレールのように笑

アスタナのフグルサングは、アルがスプリントを制してタイムボーナスを取ると思っていたんだろうが、結果は真逆になった。

アスタナはバルデを捕まえたけれどもステージは勝てず、フルームはタイムボーナスをとった。

 

~しばしウリシのギアを車から身を乗り出して直したメカニックへの賛辞~

 

ランス:

2位に入ったバルギルが、二ヶ月前にあったツール・ド・ロンマンディで骨盤を骨折をしたのは本当かい?

だとしたらすごすぎるよ。

誰が骨盤を骨折した2ヶ月後に、ツールドフランスの一番厳しいレースで先頭を走ることができるんだよ。

 

 

ー ところで、誰がフルームとまともに競い合えると思う?

第五ステージでアルのアタックを観た時は、彼はすごく活発に見えた。

まあ、あれは頂上ゴールだから可能だったことだけどね。

 

ランス:

ちょっと話は逸れるけど、もし俺がツールの責任者だったら、

 

頂上ゴールのレースでは、選手にヘルメットを脱がせるよ。

もし時速10マイル(16km)で走るんだったらヘルメットは脱ぐべきだよ。

 

ー ヘルメットの着用義務がなかったのはいつまでだったっけ?

 

ランス:

確か、2003年か2004年。

 

ー なぜ?ヘルメットを取った方がいいと思うの?

 

ランス:

個人的な意見で、世界中の誰も同意しないと思うけど、

もしマルコ・パンターニがヘルメットとサングラスをしていたら、あのようなキャラクターにはなっていなかっただろうし、誰もあの個性的な顔や、表情を知ることはなかっただろう。 

 

もちろん下り坂ではそうは思わないよ。

もし今日リッチー・ポートがヘルメットをしていなかったら生きてはいなかっただろうし。

 

落車したダン・マーティンの頭を守ったヘルメット。

 

登りではヘルメットを外して、彼らの表情や、坊主頭や、長髪などの個性を見せたほうがいい。

選手の個性をもっとわかりやすくしたほうがいいんだ。

 

ローラン・フィニョンもヘルメットを被っていたら、ファンは誰がフィニョンかわからなかっただろうよ。

 

なんでこれを言ったのかわからないけど、これすごく言いたかったんだ!笑

 

 

ー 僕はてっきり ”顔が分かる方が選手がリスクを取ったアタックをするとでも言うかと思ったけど、キミは単純に選手の顔が観たいんだね?

 

ランス:

そうさ。

マラソン選手は時速20km近くで走るけど、ヘルメットしてないだろう?彼らも転ぶ危険性はあるのに。

 

 

~話しを本筋(フルームの対抗馬は誰か?)に戻して~

 

ランス:

頂上ゴールじゃないと登りでのアタックは活性化されないよ。

バルデだって下りで20秒も離したのに、平坦で追いつかれてしまった。

 

ー 頂上ゴールならアタック合戦が起こっていたのに。

 

ランス:

(今日のコースレイアウトで)一番その恩恵を受けたのはクリス・フルームさ。

 

キンタナがトラブル?で脱落して、コンタドールも脱落、アルは引き戻されて、ダンマーティンもダメ(落車)。

 

結果、フルームが最強さ。

銃に弾は入っていないよ(No more bullets in the pistol)=対抗馬はいないよ。

 

まだ一週目だよ?ツールは三週目が一番厳しいはずなのに。

 

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ランスが前編で、フルームの小さすぎるギアはセコい!と喝を入れていますが、彼も現役時代は高ケイデンスで山を登って、プロトンから非難ゴーゴーだったらしい…です笑

 

観戦歴の浅い私のようなファンとは違い、ランスの現役時代を知っているファンはそこら辺も含め楽しめるのだなーと嫉妬してしまいました笑

 

 

 

あっ、44:21からランスによるテイラー・フィニーのモノマネが聴けます。レアです。コロラド特有の訛りらしーです。

 

ランス・アームストロングによる第9ステージ評 【前編】「アルがセコい?フルームのギヤ比のがセコい!」

 

今年のツールから、軽い気持ちではじめたというランス・アームストロングによるポッドキャストStages』。

 アメリカに限らず世界中で聞かれており、Podcastスポーツ部門の2位になったほどの大人気ぶりだそうです。

プロトンの王であるランスによる、カオスだった第9ステージ評を訳してみました。

  

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ランス:

まず、昨日俺が予想していた通りの(危険な)展開になったな。

 

ー そうだね。厳しい山岳が幾つかあって、最後の超級山岳(モン・デュ・シャ)の直後に危険な下り坂からのスプリント。さらに雨も降った。

その結果が下り坂でのクラッシュ。何人がリタイアをしてしまった。

 

ランス:

難しい坂があって、それ自体はいいことなんだ。

だけどその直後に下り坂、ゴール前に15kmに及ぶ平坦を持ってくることによって、最終山岳でのクライマー同士の戦いを ”中和” してしまったんだ。

 

そしてフルームのメカトラと、アルのアタック。

もし自分がアルの立場だったらどうするわからないけど、結局アルのアタックはうまく行かなかった。

 

それよりも、アスタナの二人(アルとフグルサング)のゴール前平坦での動きの方が理解しがたいよ。

 

フルームは昨年のチャンピオンかつ、今大会の大本命かつ、現マイヨジョーヌだよ?

彼の前に出て引っ張る意味がわからない。

 

その結果、フルームは3着に入りタイムボーナスを与えてしまった。

 ホントにアスタナは何がしたかったのか、理解できないよ。

 

 

ーちょっとレースを、最終山岳(モン・ドュ・シャ)まで戻してみよう。

 

ランス:

あそこの登りでAG2Rがアタックした理由がわかるかい?

ここは彼らのホームとする練習コースなんだ。

 

彼らはここの登りも、下り坂も、コーナーもすべて熟知している。

こんなことは滅多にないよ。

俺は別に「AG2Rがそこでアタックするのがクールかどうか」について何か言うつもり全然ない。

 

ただ、今日のハイライトとして、そこでフルームは一番のアシストであるゲラント・トーマスを失ったということだ。

 

そのキッカケになったのは、AG2Rのアタックだった。 

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第9ステージで落車・リタイアしたゲンラント・トーマスのジャージ

 

ー 山も下りの知っているホームアドバンテージっていうのは、どのくらいあるものなんだい?

 

ランス:

それは多分にある。

だけど、他のチームはAG2Rのアドバンテージをそのままにしておくべきではない。

 

ツールみたいな大きいレースがあって、その重要なステージだとわかっているなら、事前に3、4回は試走するべきだよ。

だって他のチームはバルデや他のAG2Rの選手にとって勝手知ったるコースだということを知っているのだから。

 

(その下りで落車した)リッチー・ポートがコースを知らなかったとは思わないけど、その下り坂によって、彼の一日は変わってしまったよね。

 

 

ー アルのアタックに話題を移そうか。

みんな ”良い行い” が好きだよね。そしてそれに反したら、プロトンから村八分chill your ass)にされる。

アルはそのあと、報いを受けたことはあまり公になっていないけど。

フルームによる報復アタック←フルームはあくまでよろけたとインタビューで答えています笑。

  

ランス:

テレビで観ると面白いよね。

アタックしたアルにダン・マーティンが手をあげて何かを話しているし、リッチー・ポートも制止しようとした。

でも、事実としてあるのは…

 

アルのアタックまで、あの山岳は”退屈”だった。

 

もしかしたらそれは、スカイの完璧なコントロールによって、他のライバル達がアタックしにくい速度に保たれていたのかもしれない。 

または、超級山岳の後に下りと15キロ平坦が待っているコースレイアウトが、選手たちのアタックする気を削いだのかもしれない。

 

 

ー フルームについて話そうよ。

 

ランス:

彼は何を考えているのかわからない選手だよ。(He is hard to watch

 

彼は優れているし、強い選手だけど、本当に何を考えているのかがわからない。

それに手元の何をみながら走っているのだろうね笑

 

ー 登りで彼は苦しんでいるようにみえた。でも違ったんだ。

頂上までたどり着いたら急に、先頭に立って集団をコントロールしだしたんだ!

 

ランス:

フルームについて、あるツイートをみたんだ。

彼がその日に乗っていた自転車のギヤの写真だったんだけど、それを見てぶったまげたよ!

 

なんと、前38 後32!! とても小さかったんだ!!

 

確かに、グラン・コロンビエや、モン・デュ・シャは険しい。

でも、昨年のチャンピオンかつ、今大会の大本命かつ、現マイヨジョーヌのフルームのギアが、前38 32だよ!!

そんなのマウンテンバイクのギヤ比だよ!!

 

ここを前回走った1972年のツール*にこのギヤ比で走ったら、笑いものにされて即刻プロトンから追い出されるよ笑

 

ここに飾ってある古い自転車をみてごらんよ。(収録会場はランスの友人のバイクショップ)

全部が前5339だよ。それで昔の選手はあの山を越えていたんだよ。

 

38 32はとてもとても小さいギヤ比だ。

デブで遅くて歳をとったキミや俺みたいのがつけるギヤだよ。

 

ー フルームは本当にそのギヤ比で走っていたのかい?そんなにクルクル回していた?

 

ランス:

回していたし、そのギヤ比を総合勢の集団に残る為にずっと使っていたよ。

 

 ー 今日のステージをみていればわかるだろうけど、スポーツマンは、公明正大(fair and square)でなくてはならない。

 

ランス:

俺はフルームがアルに対して公明正大であったとは思わない。

 

(その小さいギヤが登場)

このギヤは…別のスポーツだよ。

 

 

ー チームの戦術についてはどうだい?特にリッチー・ポートのいるBMCについて。

 

ランス:

BMCは何をしたかったのか全然わからない。

ポートの山岳アシストであるはずのニコラ・ロッシュは...寝てたの?ってぐらい何もしなかったよな。

 

ポートがリタイアしたいま、そのことはもう関係ないことけど。

 

BMCの作戦について、オーストラリアのラジオ中継がとても的確な指摘をしていた。

考えられることは二つ。

戦術が稚拙なのか、あるいは戦術を組める選手がいないのか。

どちらにせよ、よくないことだ。

 

オレはロッシュをよく知っているから、彼がプロフェッショナルな選手だってことを知っている。だから彼のせいではなく、チームとしてやりたかったことが機能しなかったんだと思う。

 

 

ー じゃあそろそろリッチー・ポートについて話そうか。

キミは(今日のステージ)でこういうことが、誰かの身に起こることを予測していたよね。超級山岳の後の、あのクレイジーな下り坂で。

しかも路面は(雨は上がっていたとは言え)ドライとウェットの繰り返しだった。

 

ランス: 

ああいった木々で生い茂った道が乾くのには最低でも丸一日は必要だ。

 

でも、その湿気が落車を引き起こしたのではないと思う。

 

とても狭く急でクネクネした下り坂を、時速80kmで下っていたんだ。

どうしてポートがあのインサイドのラインをとってしまったのか。それは、目測を誤ったか(過剰修正)、ただ単に悪いラインを選んでしまったのか。

わからないけど、壁までふっ飛ばしてしまった。

それにダン・マーティンも巻き込まれてしまった。

 

1ついい?

 

今日のコースは「クイーンステージなんかではない」。

 

(後編につづく)

 

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 *これがどの山岳を指しているのかわかりませんでした(グラン・コロンビエ?)。

 

 

今回のエピーソードはランスの話したいことが沢山あったため、ジョークが少なく内容の濃かったので前後編に分けました。

また、ランスの主張と真逆に訳しているっていうことは無いとは思うのですが、指摘などありましたコメントかツイッター(@If_So_Ara)にリプライをください。 

 

 

 

 

 

内容に関係ないですが、このフルームの子ども(ケラン君)…可愛すぎ&似すぎてません? ある意味、世界一レアなぬいぐるみのプレゼント。