ランスのポッドキャスト復活!!
8月10日〜13日にアメリカ・コロラド州で、四日間に渡って開催された『コロラド・クラシック』に伴い、ランスのポッドキャストが特別編と題して ”ひっそり" と再開していま…
コロラド・クラシックでランスのPodCastが制限されるかも、という話。大会主催者公認となると、「いかなるイベントへの参画を禁止する」というUSADAの条項にひっかかるらしい。大変だな…。 / “Armstrong’s Colo…” https://t.co/xR0CLmcU0m
— あきさねゆう@サイバナ (@saneyuu) 2017年8月5日
…せんでした↑↑笑
結局スポンサードは解除され、代わりにアメリカ国内のワイン会社がスポンサーにつきました。
その『コロラド・クラシック』で話題を独占したのは、直前のツールで総合2位のウラン(キャノンデール)でも、総合優勝したマヌエル・サニ(BMC)でもなく、
TJ・アイゼンハート というアメリカのホロウェスコ・シタデルというコンチネンタルチーム所属の選手 。
Make the moment great. Because nothing else exists! ☮️🦋💜#makemoments #hincapie #goodvibes #enjoylife #laughing #hippie #sunshine pic.twitter.com/QCdDlvg6zf
— TJ Eisenhart (@tj_eisenhart) 2017年8月13日
自転車ロードレースファンならご存知、サイクルブログ『サイバナ』を運営するあきさね氏が大注目している選手です。
そんな話題沸騰の TJ が、ランスのPodcast にゲストとして登場しました。引退したヒンカピーならともかく、現役の選手が(世界中で干されている)ランスが運営する番組に出演するとは、同じ国の選手とはいえ大した勇気というか、コンチネンタルチーム所属だからこそというか…。とにかく色々とぶっ飛んでいる回だったので、その何分の一でも伝わればと思い訳しました。よかったらどーぞ。
【読む前の注意点】
TJ の喋り方に非常に強い個性があります。「 田舎のコンビニ前でたむろしている後ろ髪の長い兄ちゃん」の口調を想像して読むとちょうど良いかと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ランス:
今日はゲストが来てくれている。TJ・アイゼンハートだ。ようこそ!
このポッドキャストを聴いたことある?
TJ:
メーン。最初のやつだ。最高だったぜ。最高だ。JBとランスが最高だ。
12歳の俺に聴かせてやりたかったよ。いまの俺にとっても最高だったけどな。
ランス:
名前の「TJ」は何の略?
TJ:
ランス:
二日前(第2ステージ)の君の走りは最高だったよ。みんながその話をしている。
TJ:
メーン。そんなでもなかったよ。(ゴール前で差されたし)
ー ランスが君の走りを「フルームの真逆」と表現していた。フルームは走ってる時ずっと下を見ているのに対し、君は首が鳥のように、森で犬を探しているようにキョロキョロしている。そのスタイルはどこからきたんだい?
TJ:
ハハッ。それ色んな人に言われるんだ。それまでは無意識だったんだけど。
自転車を乗り始めた11歳か12歳の時は、とても背が小さかったし痩せっぽちだったんだ。だからプロトンの中では首を伸ばして前方を見ないと何が起こっているかがわからなかった。たぶんその時のクセが身体に残っているんだろうーよ。
ー フルームが常に顔を下に向けてツールを優勝したように、是非ともそのままのスタイルで行ってほしいよ。
君の言動はとても個性的だね。
TJ:
あぁ。そのせいでアンチがたくさん生まれるんだ。
ランス:
そうなのか!?(共感の眼差し)
TJ:
そういう奴とはできるだけ関わらないようにしているよ。好きな奴としか話さない。でも、もし俺の悪いことを書くやつがいたら…そいつのことは ”絶対” に忘れない。
ランス:
笑。
ー それはとても大人な考えだ。(君みたいなガキっぽい奴にしては特に)
TJ:
人は「幸せ」を恐れるんだ。「純粋な幸せ」が怖いんだよ。だから、誰かがすごく幸せだったらそれを壊そうとするんだ。
ランス:
その捉え方に世代の違いを感じるよ。
TJ:
BMCにいる時「プロツアーを戦う選手としてあるべき姿」のようなものを学んだんだ。しかし、それの多くはフェイクでしかなかった。偽りだったんだ。
レース後のインタビューなどで「あそこの登りは何ワットで走った」とか、技術的なことを話しても普通の人にはわからないよ。そんなの選手同士にしか通じない、興味ない。
それよりも ”正直な気持ち" を伝えるほうがいいと思うんだ。出来る限り正直にさ。でもみんなはそれを評価しない。メディアはもっとこう「空力性能の話」なんかを求めているんだ。笑
ランス:
第2ステージ後の君のインタビューを読んだんだが、逃げが集団に捕まりそうになった時の感想を聞かれた君は「balls deep(やってやる!のド下ネタver)」と答えていた。俺は自分の目を疑ったよ。インタビューでそんなこと言う奴がいるなんて信じられない。
TJ:
ハハッ。ユタの山で仲間とスケートやスノボーをやってると、酸素が薄いからなのか、みんなこういう話し方になるんだよ。笑
ー 君のインスタグラムをチェックしたのだが、君は素晴らしいスケッチアーティストなんだな!
TJ:
小さい時からいつもママがスケッチブックを渡してきて、それにずっと絵を描いてたんだ。10歳の時にエアブラシの教室に通ってたんだけど、同時に自転車もやっていて、18歳の時にBMCと契約したんだ。
いま思うと退屈な決断だったけど、「これからは絵や遊び一切をやめて100%を自転車競技に注ぐ!」と決めたんだ。それからは自分の個性を捨て、典型的なヨーロピアンスタイルの自転車競技的な生活を二年間送ったんだ…。
でも、その二年が終わって帰ってきて自転車に乗るのを辞めた。その後すぐに地元のカレッジで基礎美術を一年学んだんだ。そこでチャコール(木炭画)が好きになって、油絵が好きになった。
自転車のシーズン中は絵をかけないから嫌だよね。頭の中にあるイメージを吐き出せないのはストレスだよ。ある夜なんか、午前二時に急にイメージが沸いたので飛び起きて…(以下略)。
ランス:
イギリス国旗の絵はすごかったよ。
TJ:
だろ?俺の絵はすごいんだ。
【青いネックレスの秘密】
メディア初公開のエピソードなのですが、イマイチおもしろさの分からない話だったので割愛。お母さんの化粧箱から勝手に取ったネックレスで、寝る時以外はタイムトライアルの時でも外さないそうです。
TJ:
四年間、ヨーロッパで全力で自転車選手として過ごした。そして他の選手同様、プロツアーを目指していたんだけど、だんだん疑問が湧いてきたんだ。「なぜ目標がプロツアーに出場することで、目の前の勝利じゃないんだ」ってね。
よく「来年はプロツアーに出るの?」と聞かれるんだけど、それよりも俺は可能な限り勝ちたいんだ。周りの人に恩返しをするために。俺に期待して協力してくれた人のために、とにかく勝ちたいんだ。
ー ランス。君が23歳の時と比べてどうだ?
ランス:
俺の時とは時代が違うから比較は難しいよ。いまの自転車界も十分に伝統を重んじているところがあるが、俺が現役の時はそれがより顕著だった。
ツール時のタイラーの動画や、TJ のネックレス、それにキャノンデールのチームバスの中での動画(↓参照)や、カハルラルチームのブギなど、1990年代中盤の自転車界だったらそれだけでキャリアが終わってる。
If you're wondering how the @Ride_Argyle squad warmed up for Stage 4 of the @CoClassicPro today... 🎥🎶 @UranRigoberto pic.twitter.com/Y5MoR55BkT
— Velon CC (@VelonCC) 2017年8月13日
ツールのプレッシャーから解き放たれ、自由の国アメリカの地で踊り狂うウラン。
バーブロー(聴き取れず…)はそれで終わったんだ。彼は自分のハーレーで試合会場にド派手に登場したせいでキャリアが終わってしまったんだ。しかしいまは違う。
それに、今の時代は自分からSNSなどを通じて、積極的に発信ができるし、それはチームのものではなく”自分のコンテンツ”になるんだ。自分で作って配信して、それをチームが利用するかもしれないが、自分がプロデューサー、演者、ディレクターなんだ。なんて素晴らしい時代なんだ。
ー 三週間のツールと四日間のコロラド・クラシックで、みんなが聞きたがっていたのが次に来るアメリカ人選手(未来のランス・アームストロング)についてだ。
ランス:
「次に来るのはこいつだ!」というのはいいたくない。(←ツール評でガッツリ言ってたくせに!笑)
俺が若い時は「未来のグレッグ・レモン」と言われてたけど、「いや俺はランス・アームストロングだ」と答えていたとよ。
TJ:
そうだぜブロウ!オレは俺だ。グレッグもランスも尊敬しているが、それはそれ。オレは俺だ。
確かにランスは「俺が自転車に乗っている理由」だ。2001年に兄弟を訪ねるためにスペインに行ったんだ。その時ランスがピレネーにマイヨジョーヌを着て登っていたんだが、それが(自転車に乗る理由の)全てだ。それだけだった。
でも、俺はランスになりたいとは思わない。俺は俺になりたいんだ。
ランスやジョージ(ヒンカピー)に俺が影響を受けたように、俺も子どもたちに影響を与えたいんだ。
ランス:
賛成だ。それは俺が子どもたちに言っていることと一緒だ。
TJ:
俺の失敗を含めて影響を与えたいんだ。みんな失敗をするし、その失敗こそが美学だ。人間だれでも間違いはするし、それが人間を美しくする。
ランス:
ありがとう TJ 。
さて、今後の君の予定は?
TJ:
知らない。わからない。笑
ランス:
今夜のアフターパーティーはどこでするんだい?
TJ:
それはBMC…あっ、もちろんBMCのは参加しないけど。笑
どーせ奴らはシャンパン一杯だけで飲んで、みんな仲良く9時半にオネンネだろ?
たぶんヒンカピーのチームバスだろうな。とても楽しいみだ。ランスももちろん来るよね? 来ないの? なんだ残念。
ー 君はインスタグラムとツイッターもやってるよね?
TJ:
ああ。インスタはこれ(@tjeisenhart)で、ツイッターはこれ(@tj_eisenhart)だ。ツイッターのアカウントが以前に乗っ取られてね。
ランス:
アソコの写真で埋め尽くされてるのか?
TJ:
いやいや、ログインできないだけだよ。
インスタがメインかな。ここ数日でフォロワーが増えたよ。フォローして後悔はさせないよ。
ー コロラド・クラシックの四日間は素晴らしかった。
ランス:
初年度で新しいコンセプト、新しいフォーマットのレースだった。素晴らしかったよ。
TJ、今日は来てくれてありがとう。この後、可愛いオンナが待っているんだろ?
TJ:
ああ、兄の嫁が待っているよ。笑
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
若干23歳のコンチネンタルチーム所属の若手が、ランスと対等…どころがタジタジにしていた TJ・アイゼンハート。「修行僧のようなヨーロッパの自転車選手生活なんか嫌だ」と言っていますが、宣言通りに勝ちまくればワールドチームも見過ごすわけもないはず。 彼の今後に注目です。
もっと TJ について知りたくなった人は、圧倒的な情報量&熱量を誇る『サイバナ』の下記エントリをどうぞ。
BMCのトレーニーとして来日した際の TJ 紹介↓
ツアー・オブ・ユタで活躍した TJ ↓
チームやスポンサーなど全方位に気を使ったインタビュー(ex.フルーム)ばかりのなか、本音をガンガン言って(時には)やらかしてしまう TJ のような選手の存在は、自転車ロードレース界に新しい風を吹かせてくれると期待してしまいます。
最後に誰も聞いていないですが、ブエルタの総合優勝予想!
通ぶって大穴狙いのローハン・デニス(BMC・オーストラリア)。
二日目に早々と手放したマイヨ・ロホを奪還します!たぶん!