今回のゲストはランスの元チームメイトだったデュラン・ケイシー。自転車選手から、その当時はまだ誰も知らなかったグーグルへ転職したという異色の経歴の持ち主でもあります。
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ランス:
今日は予測できる展開で退屈だった。
しかし、最後のゴール前はとても興奮したよ。
ー ゴール前である二人の選手以外はテクニカルな ”ヘマ(flub)” をしたね。
ランス:
ボワッソンハーゲンはスプリントをかけるタイミングが遅かったせいで、二つのステージで2位になっている。
あのシーンが凄いのは、追ってくる後続の選手たちを諦めさせたことだ。平坦コースであれをできるのは本当に凄い。この3週間で一番の出来事かもしれない。
ー ボアッソンハーゲンはあの逃げ集団のなかで一番スプリント力があった。集団の中でゴール前まで待つという作戦もあったはずだ。
ランス:
10人や20人の集団で一番スプリント力があり、それを全員が知っている場合は、その選手は集団を1つにする責任があるんだ。もし三人が飛び出した場合、それはその一番スプリント力のある選手を警戒しているからなんだ。
しかし、ボアッソンハーゲンにはチームメイトがいなかったから、脚を溜めたり、集団を引いたり、アタックを潰したりと色々する必要があるはずだったか、どれも起こらないかった。
デュラン:
その集団で勝つ責任を背負っている場合、他の選手をチェックすること以外に選択肢はない。普通はね。
小さな集団で、躊躇ったことにより負けるなんてことは沢山ある。
しかしボアッソンハーゲンは違った。
ランス:
これだけは言わせてくれ。3000万ドル(約30億円)の資金がある BMC というチームは、このツールで何もしていない。確かにポートのリタイアという不運はあったが、今日彼らは何かしなければならなかった。
20人の逃げで、フランスのプロコンチネンタルチームのディ、ディレ、ディレクト…なんでもいいや、あとフォルテュネオがそれぞれ3人ずつ逃げに選手を入れているんだ。
一方で、3000万ドルチームが逃げに一人も入れられない?
最悪だよ!
デュラン:それに、BMCはメイン集団の前を引くこともなかった。もし俺たちの時代に選手を逃げに乗せられなかったら、
ー それだ!そういう意見を君たち元選手に聞きたかったんだ!
ああいった時に選手にはどういった指示がくるんだ?
ランス:
監督から「逃げに乗れなかったのだから集団を引いて追いつきなさい」と言われるさ。チーム・スカイにとってはクリスマス休暇になるがね。
逃げに一人の選手も入れることができず、さらに集団を引くこともしないということは、
BMCのモラルはゼロだ。
ー 注目を集めていて高い給料を貰い、選び抜かれた選手のいるチームが、逃げに一人も送り込めなかったことに言い訳はできないと。
デュラン:
チームの予算がいくらいるかなんて関係ない。モラルがないんだ。それだけだ。
ランス:
その通りだ。予算はあっても、モラルがクソなんだ。
何もしない監督からもそれは見て取れる。一日ドライブを楽しんだだろうよ。
ー 昨日言っていた、いまだツールでの勝利がない11のチームについて、彼らは勝てなかったが逃げで何かをしようと必死になっているように見えた。
ランス:
でもデュメンション・データは見せた。勝ったんだ。
よし、そろそろラウンダバウトの話をしようか。
通常ラウンダバウトは右行っても左行っても距離は50/50だ。どちらを選んでも同じだ。しかし、60/40もあれば70/30もある。
だからそういう場合は近い方に行くんだ。ゴール間近のコースなんだから尚更だ。
俺の現役の時代、そういう時はヨハン(監督)から「右にいろ」と指示があった。選手もコースは知っているはずだ。レースブックにコース前の地図がある。ラウンダバウトをどっちを走るべきか書いてあるんだ。
ボアッソンハーゲンともう一人の選手は右をとった。そうするような指示があったかどうかはわからないが。
Boasson Hagen and Arndt go into the roundabout behind and come out ahead pic.twitter.com/76huoo8Tuk
— the Inner Ring (@inrng) 2017年7月21日
デュラン:
俺が逃げに乗るつもりの日だったら、たっぷりと時間を使ってコースレイアウトを確認しておくよ。
ランス:
そうだよ。いまの時代iPadやGoogle Earthなどいろんなもので確認できる。
木々の位置だって確認できる。
ーじゃあ今回は誰のせいなの?選手?監督?
ランス:
通常、黄色い旗を持ち誘導する警察がいるのだが、あそこにはいなかった。それを不運と思うしかないよね。
ーラウンドアバウトはゴールから残り2kmか1.5kmの位置で、二人が短い距離を稼いだ。
ランス:ヘリの映像で観るとあれで20mぐらいだ。あの瞬間に勝負は決まったし、素晴らしかった。
ギャップのキッカケを作ったのはニキアス・アルントだった。ボアッソンハーゲンはその後ろについて差したんだ。
このレベルの選手たちのなかであの加速なんだから、まったく素晴らしいよ。
ーあれは予期していなかった興奮するシーンだった。
明日はまた大事な日だ。短い個人TT。
デュラン:
ツールで22kmのTTは本当に短い。通常は40~60kmが普通だ。だからこそ厳しいな。
ーコースを設定した人は、ツールで個人TTが重要な要素になるのを避けた。そのはずだった。そうだよね?
ランス:
去年フランス人のツールでバルデは2位だった。
そして今年も2位だ。レイアウトを決める人は、その気になれば22日間パリで戦わせることだって可能さ。
確かにレースをより面白くする意図はあるだろう。しかしフランス人のバルデが有利になるようにしたのは確かだ。これは彼らフランス人のレースだ。
TTは短ければウォーミングアップは長い時間行うし、TTが長ければ短くていい。選手はスタートする時点で、調子を頂点に持っていかなければならない。
ーこの短い個人TTで誰かフルームを捕まえることはできる?トラブルなどが起こる以外で。
デュラン:
当然今日、誰かにとってトラブルが起こる最悪の日になるし、他の選手は良い日になる。
ランス:
何かが起こるっていうのは、総合上位三人について行っているんだ。
ー ツールが始まる前からキミはこのTTコースの真ん中には "シュナック" があると言っていたよね? シュナックってなに?
デュラン:
TTっていうのはリズムなんだ。経営みたいなもので、正しいところで正しいだけの力(予算)を使う。その力を使うべきところがこのシュナックと言われる 2.5km の登りだ。コースレイアウトを観てよ。とてもテクニカルだ。
ランス:
このレイアウトでどうリズムを作ればいいんだ。
だからこそ明日はウォーミングアップが大事になる。より良いウォーミングアップがリズムを生むんだ。
デュラン:
ランス、総合上位の選手はだいたい何時にウォーミングアップを始めるんだい?
ランス:
多くのレースは正午に始まる。
選手の練習は午前9時や10時からだから、正午スタートは彼らにとってすでに遅い。
しかし、今回のフルームのスタート時間は明日の午後5時だ。
彼は朝、試走するだろうな。
ー試走は自由にできるの?車はいない?
ランス:
ああ。そうだろう。
例えコースを20回走ったところで、車が走っていたらそれは全然別のコースのように見えてしまう。
ランス:
フルームは朝に試走して、ランチを12時が1時にとって、後はスタートまでゴロゴロしてるだろう。俺が彼ならチームカーに乗ってコースをみるだろうね。彼はきっとクヴィアトコフスキーの後ろを見るだろう。そしてクヴィアトコフスキーは踏まなければならない。本気で走っているところを観ないと意味がないんだ。
バルデはフルームにメカトラがない限り捕まえられないだろうな。ウランは、まあどうだろうな。(he can test)
今日のレースをみんなで観ていて誰かが俺に聞いてきたんだ。
もし1位との差が10秒 とかわずかな差だったら、パリで勝負を仕掛けるかと。だって1位はタイムボーナスがあるし。
もちろんするだろうと答えたよ。
ー 不文律があるけどそれはどうだい? 過去にパリで順位がひっくり返ったことはあるの?
ランス:
あるよ。確か1989年にパリでタイムトライアルがあったときだ。グレッグ・レモンがローラン・フィニョンを破ったんだ。
でもそんなことは二度としないだろうね。フランス人がアメリカ人に負けたことがあるなんてことを繰り返さない。
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第19ステージで一番グッときた写真。オリカのベテラン平坦アシストのマシュー・ヘイマン。2016年のパリ〜ルーベを制した時の印象が強烈に残っているせいか、汚れた姿がかっこいい。