溜めず、恐れず。

自転車ロードレースを翻訳するブログ...だったけどいまはただの雑感ブログ。

マーク・カヴェンディッシュ ツール後インタビュー「あそこに飛び込む判断に間違いはなかった」

 

今年のツール・ド・フランス第4ステージ、ゴール前のスプリントで落車によって1勝もあげることなく去ることになってしまったマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)。

シーズン序盤に苦しめられ、ツール出場すら危ぶまれたウイルス性の病気のことを始め、ツールでの落車や、サガンへの思い、今後の目標などを語ったインタビューが、とても印象深かったので訳しました。

 

www.cyclingnews.com

 

…ただ、彼のイギリス訛りというか、出身地であるマン島訛り?がとてもとても強く、聴き取れていない箇所が多数ありました。特に落車やサガンに関する箇所は、言いたいことを敢えて回り道させるような、歯切れの悪い話し方だったので、今回のインタビューは話半分で読んでいただければと思います。 

ご指摘いただければ修正にはバシバシ対応しますので、何卒よろしくお願いします。いや本当に。

 

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カヴェンディッシュ

アブダビ(ツアー)で疲れが出始めて、勝利はしたのだけど何かがおかしかったんだ。いつもより疲れ方が酷く、だから自転車を何回もチェックしたんだ。

ミラノ~サンレモの時も同じだった。とても痩せていていい状態だったんだけど、足首を痛めて、身体が「何かおかしいから止まれ!」と言っているようだったんだ。

病気は去年に無理をしすぎたことが原因だと思う。(正式な病名は:EBウィルス感染による伝染性単核球症

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ツール初日はとても誇らしかったんだ。10年間プロ選手としてやってきて、勝利しなかったらみんな「歳を取ったからだ」とか言って俺の実力に疑問を持つだろう?

10年もプロであり続け、常に勝利しなければいけないプレッシャーと戦ってきた。負けても負けても挑戦し続けた。それができたのはチームや周りでサポートしてくれた人がいてくれたからだ。

 

ー 全治何ヶ月とわかる怪我とは違い、ウイルス性の病気は先が見えないものだろう? 例えばマイケル・ロジャース*の記事を読むと、彼は9ヶ月〜1年の間も不透明だったと言っていた。

*不整脈により2016年に引退

 

カヴ:

原因がウイルスだともっと早くわかっていればよかったんだけど、残念ながらそのウイルスを持ったままワールドクラスのレースを戦ってしまった。それが悪化させること繋がったんだ。それにこれは未成年の時になるケースが多いから、大人がかかると症状がよくわからないんだ。

そのためツールの準備期間が6週間しかとれなかった。いつレースに戻れるかがわからないことが一番辛かったよ。

 

ー 今年のツールを諦める覚悟もしていた?

 

カヴ:

ツール2週間前でも(まともに)自転車に乗っていなかったんだ。

色んな人から電話かかってきて、中には同じウイルスを持っていた人もいた。カデル・エヴァンスからも電話があり「最後のツールになるかもしれないから頑張れ」と言ってくれた。僕の立場を分かった上でしてくれるアドバイスはとても暖かかったよ。

無理をすれば選手として長期的なダメージが大きいことはわかっていたし、それについてはチームとオープンに話し合っていた。準備が十分に整わない場合はツールに出ないと決めていたんだ。

 

家にいるよりも、出場した方が勝利する可能性がある。それ以上にシンプルなことはない。

確かにツールで勝てる可能性は高くなかった。でもチームはその可能性を高くする為にサポートしてくれて、そこに少しの運があったら勝てるかもしれなかった。

ディメンションデータはツールで一番強いリードアウトができるチームだから、集団で良い位置にはつける。それができるチームなんだ。

 

ー ツールに出場することにリスクはあったよね。

 

カヴ:どういう意味?

 

ー いや、あの、健康とか、色んな面でさ。

 

カヴ:もし負けたら周りが俺のことをどう見るかという意味かい?

 

ー そう、そうだ。評判とかの面で。

 

カヴ:

それは仕方ないことだ。説明するのは難しいが、皆に力を見せることはできると思っていた。

例えば俺が登りで苦しんでいる時、チームメイトは俺を待ってくれるんだ。そしてゴールまでついてくれる。それは並大抵のことではない。俺はラッキーだ。

俺はチームとしての責任を果たさなければならなかったし、それをするべきなのはチームで一番お金を貰っている俺だろう?

 

ツールで「何かしなければならない」と緊張もしていたが、その責任をエドエドヴァルド・ボアソン・ハーゲン)が引き継いでくれたんだ。 

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彼はツールに、自らの勝利ではなく、アシストとして参加した。そこに突然「自らの勝利」という責任がやってきたんだ。でも負けて、負けて、それでもチームと共に何度も何度もしつこくトライして、最後に報われた。素晴らしいよ。とても誇らしい。

 

エドはどういう選手なんだい?彼は前身の MTN クベカのときからいる選手だろ?メディアの立場から彼はとてもシャイで静かな選手に見えるんだ。チームバスでもそうなの?

 

カヴ:

エドはゲラント・トーマス(スカイ)みたいな奴だ。トーマスは静かだが、周りで起こっていること全てを把握しているし、なんでも覚えている。それにドライなユーモアを持っている、良い奴で面白いやつだ。エディーもそうさ。静かだが、何か言葉を発したかと思うと笑いを誘う。俺のキャリアの中でももっと良いチームメイトの一人だ。

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僅差でキッテルに敗れた第8ステージ後「これだけの差で負けたんだ!」と訴えるボアソン・ハーゲン

 

SNSやプレスの中で、サガンの失格についての是非や、君が勝手に落車したのではないかというような話が沢山されていた。あの時は大変だったかい?

 

カヴ:ピーターにその意図はなかったと思った。それを彼と話して早くハッキリさせたかった。まず始めに何が起こったのかをちゃんとした視点で理解したかったんだ。

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俺自身がサガンの大ファンなんだ。ずっと良い関係だし、だから彼に対して怒ったことはいないよ。ただ、SNS上のピーターへの処分の反感は目に余るものだったし、是も非もどちらの意見にもバイアスがかかっていた。

 

大切なことは、何が起こったのかを把握することであって、それが正しいか間違いかではないんだ。

あれはレースでは起こりうる落車だし(racing incident)、それを個人の視点からのみで判断してはいけない。 

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俺は死ぬ時になっても「あの判断は間違っていなかった」と思うだろう。「目の前にチャンスがあったのに妥協した」と思う姿勢にすら自分を置きたくないんだ。

プロになってから今まで、ギャップ(隙間)のある所に飛び込んでいる。いままで行けると思ったギャップにしか飛び込んでこなかった。

俺も何度か落車をしているが、落車は起きるものさ。ツールで11回も走っているんだ。普通だったら5回出場すれば、その半分は落車しているだろう。しかしサガンは特例だ。特別な才能がある。多くのスプリンターは落車する可能性が必ず数%はあるものなんだ。

 

誰かが言っていたんだけど、俺が過去にスプリントで落車したことがあるから、あれは(サガンの関係ない)単なる落車だったという人がいるんだけど、それは馬鹿げているよ。結果に納得しないから、それと逆の意見に傾くというのは…

 

はっきりしている事実は、俺をピーターの間に何の問題もない。

彼のファンだし。良い関係ということだ。

 

ー ステージ勝利の記録*について、達成できそうだよね?

*ツール通算記録は34勝、カヴは現在30勝

 

カヴ:

そうだね。今年のツールに出場した理由もこれなんだ。俺自身からその記録について(積極的に)言及しているわけではないけど。

フルームは1勝もせずに今回総合優勝をした。でも俺は何勝もしているのに総合優勝なんてできない。自転車に無知な人は「なんでだ?」と言うけど、去年30勝の大台に乗り、それで記録更新の可能性がでてきて周りの見方が変わったんだ。

  

ー 自分のキャリアの終わりを考えたりするかい?

 

カヴ:

あるよ。正直言うと東京五輪のマディソンまであと二、三年はやりたい。ディメンションデータとの契約は残り一年だから、その後の話しだけど。

三回チャンピオンだから出場しなくてはいけない。しなかったら馬鹿だよ。

 

ツールの向けて準備している6週間の間に「俺にはまだ勝てる能力がある」ということを実感した。

俺は遅くなっていないし、遅くなることもこの数年はないだろう。

 

ー 2020年を目指すんだね。

 

カヴ:

東京五輪は)すぐにはこないだろうけどね。いま32歳だから、それほど悪くなっていないだろうし。

 

ー マディソンは誰と走りたい?

 

カヴ:

ゲラント(トーマス)だ。すごいペアになると思うよ。ジュニアの時から一緒に走っていたし、23歳以下のときも走っていたんだ。

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個人的にカヴェンディッシュの"顔"が好きなのですが、その中でもツイッターやインスタのアイコンになっている↓これは激渋。ちなみにオフィシャルサイトもかなりクール。早く勝ってガッツポーズするカヴェンディッシュが観たい!