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【翻訳】キャノンデール代表ジョナサン・ヴォルターズへのスポンサー撤退に関するインタビュー

 

ブエルタのステージ評など自転車ロードレース関連のエピソードを配信している『The Cycling Podcast』が、新スポンサー撤退が報じられたキャノンデールドラパックの代表であるジョナサン・ヴォーターズへのインタビューを配信したので、訳しました。

(31:10〜) 

 

キャノンデールというチームの話だけではなく、自転車ロードレース界が長きに渡って抱えている問題についても話しています。編集(抜粋)による主観が入らないようフル尺を訳しました。かなり長くなっていますが、ヴォーターズ氏の言葉に込められた思いが少しでも伝われば幸いです。


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ジョナサン・ヴォーターズ: 

 うちのような広告収益モデルのチームは、お金のための「終わることのない戦い」を強いられている。それは1月1日から12月31日まで続く戦いなんだ。

2011年に大きな財政的支援を受けられる機会があったのだが、その会社が直前で倒産してしまったことがあるんだ。幸いにもその会社を援助したところが我々のチームも助けてくれた。その時と似た状況がいままさに起こっている。

 

ー この状況はいつ頃分かったことなんだい?

 

 金曜の夜だ。それを聞いて一番最初にしたことは選手の代理人に連絡することだった。特にウランの二人の代理人にはすぐに連絡した。「自分の選手のために移籍先をすぐにでも探すように」と。

何人かの代理人から「公表はなるべく遅らせてほしい」と言われたので、賛成し、彼らがある程度準備が整うまで公表しないことを約束したんだ。

しかし、どこからかその情報が漏れてしまったので、代理人に謝り、土曜の朝に正式発表したんだ。

 

ー その企業はどこで、なぜ撤退したのかい?

 

企業名は言えないよ。ごめんね。

 

ー じゃあ撤退した理由は?

 

 うちとスポンサー契約することの総意がその企業内で取れなかったらしい。われわれを応援してくれる役員も多かったらしいのだけど、一人でも反対する者がいれば撤退するには十分だったんだ。だから撤退は企業側にとっても驚きだったし、僕たちは来季のバスやユニホームのデザインまで行っていたからとても驚いたよ。

でもそれに対して理解はできるんだ。こういう経験は何度もしているからね。700万ドルの広告費がGoogleやネットワークTV、ケーブルTVではなく、自転車チームに使われるんだ。

僕には反対したのが誰で何が理由だったのかはわからないが、一人の反対によって全てが台無しになってしまったんだ。これは企業スポンサーによる収益モデルにはずっと続いていく挑戦だよ。

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 10年前ならその企業のCEOなどのお偉いさんが「俺は自転車が好きだから自転車のチームに支援する」って言ってくれれば良かったものが、世界的な恐慌の影響から企業の周りの人や株主による収支への目が厳しくなってしまった。

それによって決定が多数決ではなく、全会一致によってでしかなされなくなってしまったんだ。だって誰でも自分の職を危険に晒したくたくないだろ? 結果的にそれがスポンサー契約の環境を厳しくしてしまった。

 

ー 700万ドルが不足しているということだが、現状はどんな感じだい? またこれを聴いている人の中でスポンサードしたいという人や企業がいるかもしれないから、どんなメリットがあるのか教えてくれるかい?

 

 チームには既にオースとキャノンデール、ドラパックによる比較的多額な資金がある。だからもし誰かがチームのファーストネームに名乗り出てくれるのであれば、それはパズルの最後のピースとなれる。それが最初のメリットだ。チームのファーストネームになれる。

チームにスポンサードすることによるブランド力の向上という視点からだと、1000万ドル以上の価値があると思うよ。企業にポジティブなイメージをつけたいのならばこのチームは最適だと思う。

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 確かにフランスとベルギー以外の国で、自転車ロードレースは一番のスポーツではないのかもしれない。しかし自転車ロードレースに興味の高い国へ非常に高い露出がある。オーストラリアや、イタリア、アメリカ、コロンビア…それに日本だってそうだ。

これらの国へアピールできるスポーツは他にはない。自転車ロードレースは世界をまんべんなくカバーしているスポーツなんだ。

 

ー ツール2位のウランは発表後すぐに他チームと交渉することができたのにも関わらず、チームに二週間の猶予を与えると発表した。君はツイートでそれに感謝の意を表していた。それについてはどう思っているの? また(スポンサーを見つける)チームとしての最終期限はいつぐらいになりそうなんだい?

ウランに感謝を述べるヴォーターズ氏のツイート 

 去年ランプレ・メリダは、中国のTJスポーツとスポンサー契約をしようとしていたが最終段階で破断になった。しかしその後 UAEが契約を申し出たんだ。12月1日に。期限という意味ではそれぐらいまで待つことが可能だ。 

しかしそれは選手たちに対してフェアではないと思うんだ。確かにUCIの設定する期限があるのだけど、僕は選手たちに他チームと交渉する猶予を与えたい。去年のランプレに、もしUAEがスポンサー契約を申し出なかったら選手たちは路頭に迷うことになっていただろう。

だからこの二週間程である程度の決着をつけなくてはならないと思っている。それが現実的なところだろう。それに前向きなエネルギーや一般の人たちからの反響がある。それを企業や個人が目にして、力を貸してくれることを願っているよ。我々は早いスピードで物事が進む世界を生きている。だからこの一、二ヶ月のうちに何かしらの方向性を持った決定ができればと思っているよ。

 

クラウドファンディングの方はどうだい?

 

 いまのところ信じられないぐらいの反響がある。僕自身それについて詳しいことは…。キックスターターに申し込んでから承認されるためには三日間の審査が必要で、いまはそれを待っている状態だ。我々はプロスポーツチームで、興味がある人の記録を取って…とにかく多くの反響に驚いているよ。素晴らしい。

 

ー この不足している資金をクラウドファンディングでまかなうことは可能だと思っているかい?

 

わからない。まだわからないよ。

現実的には…クラウドファンディングとスポンサーの半々になるかもしれないし、もしかしたら100万ドルの小切手を切ってくれる人が現れるかもしれない。それならあと 600万ドルだ。笑 

それにジョン・ケリー(第68代アメリカ合衆国国務長官、2004年アメリカ合衆国大統領選挙民主党の大統領候補)が、フルタイムの営業のように動いてくれているんだ。それ以外にも目立った経歴を持つ何人かがシリコンバレーで熱心に動いてくれている。 

この資金調達には可能性があると思っている。またその後には安定的な解決の道が残されていることを願っている。それは企業からのスポンサードってことだけどね。

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この状況は他のチームにも起こりえることだ。去年は三つのワールドツアーチームが消滅の危機にあり、一つは残ったけど二つが消えた。今年は1チームだ。まだ現れるかもしれないけど。

この不安定な状況を改善することが可能なのに、それをしない団体がいる…。この話への深入りはやめておこう。チームの短いスパンでの解決にはつながらないからね。

もし今の状況から救われたら、そうなることを願っているけど、みんな客観的な立場に立ち、こういった状況をいかに防げるか考えていかなければないらない。

 

ー 去年、君とこのスポーツの未来とビジネスモデルの不安定さについて話をした。恐らく君は最大の財政を有するASOについて言っているんだと思うけど、確かに放映権やスポンサーから入る資金の公平な分配がなされていない。それは現在行われている議論だし、長きに渡ってなされていることだ。

この問題に対して、長期的に安定した資金提供を受けているような大きなチームは、このビジネスモデルに対してあまり声を上げたがらない傾向にある。しかしこの問題に直面したチームは違う。チーム同士が集団となって交渉するアプローチ必要だと思うよ。君のチームのようなことが(今後)起こらないように。

 

ジョナサン・ヴォーターズ: 

 この問題は数十年にも渡って起こっているんだ。これに関してはさっき言ったようにあまり深く話したくない。短期的にも、あるいは中期的にもチームの解決にはつながらないからね。しかし再検討が必要なことであることには変わりない。

一旦収入の確保(保障)については忘れ、具体的な話をしよう。

我々の多くのスポンサー契約はワールドツアーライセンスを得るため(UCI規定する保証金と戦うため)にある。そしてそれはツール・ド・フランスに出場するためと言い換えてもいい。先ほども言った通り、我々には既に多額の資金が用意されている。あとはタイトルスポンサーを獲得するだけだ。

ツール・ド・フランス出場を確実なものにする為にはワールドツアーライセンスが必要だ。そしてワールドツアーライセンスを得るためには、チームをある一定のレベルの組織にしなくてはならない。それができなければ全てを失うんだ。複数のスポンサーから提供される何億という資金を、ツール・ド・フランスに出場できなければ(全て)失ってしまうんだ。ツール出場という長期の安定した立場がないことが(チーム存続への)一番の制限なんだ。

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 この(ツール出場の可否という)不安定さだけが問題であり、ASOもそれを知っている。彼らはその不安定を望んでいるだ。わざとツールがそのようになるように作っている。だってそういうシステムにすれば、誰もツール出場権のあるASOに反抗することはできないだろ?

でも逆に言えば問題はシンプルなんだ。チームに対しツールで得た資金を分配すれば済む話なん…えーっと、えっと、まあいいや。このトピックについてはいま語るべきではない。いまは直近のことの方が大事だ。いま大事なのは良い熱意と意思をもった仲間になってくれるブランド(企業)か個人を探すことだ。そしてそれは現れると思っている。僕はホントに驚いだんだ。どれだけ多くの人が…

 

ー 直近のことだと、君のチームは今日のブエルタ(第九ステージ)においてずっと集団の先頭を引いていた。君はあの光景を、不安の中にいるはずの選手やスタッフの動きを見て励まされたんじゃないか? 

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 ああ。とても励まされたよ。われわれのチームの人間は、上から下までみんな素晴らしいんだ。その人たちがチームを機能させている。たくさんの物資や資金はないが、他のチームには絶対にいないほどの教養、優しさ、同情心、絆のある「人」がいる。こういうことはチームが勝利して良い雰囲気の時ではなく、いまのような苦境に立たされている時こそわかるんだ。いまチームのみんなはとても落ち着いていて、チームのことを考えてくれている。

今朝リゴ(ウラン)がチームに二週間の猶予を与えてくれた発表を、はじめは信じることができなかった。ツールでポディウムに上がった選手が…。

 一般的に選手は所属しているチームの文句を言い、他のチームに対してよりよい年俸や待遇を求めるものだ。それを彼は、いまにも倒産しそうなキャノンデールのために、解散が確実になるかどうかが分かるまでこのチームと共にいると言ってくれたんだ。

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リゴ(ウラン)のこの姿勢こそが「キャノンデールドラパックがどんなチームであるか」を、表わしていると思っているんだ。


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今回のインタビュー内容をまとめたかのような素晴らしい記事がありましたので、よろしければ合わせてどうぞ。

 

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