溜めず、恐れず。

自転車ロードレースの英文記事やPodcastの翻訳を中心に書いています。

自転車ロードレース英文記事の読み方 〜グーグル翻訳のメリット・デメリット〜

 

f:id:toriaezublog:20170921165517j:plain

 先日、課題に出した記事を生徒さんがグーグル翻訳をつかい読んでいたことが発覚しました。真面目で熱心な方だったのですが、ワケを聞いたところ「仕事が忙しく、課題にかける体力と時間がなかった」と。

普段から大抵のことにヘラヘラしているのですが、この時ばかりはマジメな口調で「グーグル翻訳に頼るぐらいなら、課題をやってこない方がマシ」ということを伝え、グーグル翻訳を使うことのメリット・デメリットについて話しました。

 

グーグル翻訳はめちゃくちゃ便利で優秀なツールなので、「英語学習」以外で使っても何の問題もないと思っています。むしろ「使えば使うほど精度は上がる」という話を聞いたことがあるので、積極的に使った方が人間の未来にとっては良いのかもしれません。

しかし英語学習においてグーグル翻訳とは、 ”楽で便利” ということを引き換えに人間が文章を読む上で一番必要な「前後の文脈から推測する能力」の向上を妨げてしまうものでしかありません。

また、グーグル翻訳は "まだ" 万能ではありません。なのでグーグル翻訳で(自転車ロードレースなどの)英文記事を読む為に知っておいて損はない「メリット・デメリット」について書きました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

精度は高いが使い方に注意

 昨年末ごろに「グーグル翻訳の精度が大幅に上がった」ということが話題になりました。特に「英語→日本語」は翻訳家や専門家にとっても目を見張る精度だったそうです。(しかし翻訳家の存在を脅かすまでにはまだ時間がかかるとも言っていました。)

特に公式文書のような「主語と述語が明確な、読み手に解釈の幅を与えない」文章に関しては抜群の精度を見せます。実際、自分が自力で翻訳したエントリ↓をグーグル翻訳と比べてみたところ、とても引き締まった日本語になり…かなり落ち込みました。

その1でも書きましたが、記事の要約にあたる「リード文」は特に精度が高くなる箇所なので、この部分をグーグル翻訳を使い内容を理解するというのはとても良い方法だと思います。

しかしこの時に知っておく必要があることが、 ChromeSafari に機能としてついているページの自動翻訳ではなく、文章をコピペしてグーグル翻訳にかける方が精度が上がるということです(これも文の長さなどが影響するので一概には言えないのですが)。特にツイッターやインスタグラムの自動翻訳機能は意味が真逆になってしまうことが多いので、コピペしてグーグル翻訳にかけるほうが賢い使い方と言えます。

ついでにフランス語やスペイン語などのラテン語系の言語は、一度英語に翻訳してから日本語にする方が精度は上がります。これはグーグル翻訳が「対英語」を中心に研究しているかららしいのですが、(英語読める人は)試しにスペイン語を英語にしてみるとびっくりするほど自然な英語になります。

 

決して万能ではない

f:id:toriaezublog:20170920233827j:plain

「Your smile is fabulous.」→「あなたの笑顔は素晴らしいです。」

これは「グーグル翻訳の特徴」を生徒さんに説明する時によく使っている例なのですが、「fabulous」という単語の意味をグーグル翻訳に聞くと「素晴らしい」と出てきます。

これは何も間違ってはいないのですが、実はこの「fabulous」という単語の対象となるのは「女性か、ゲイの人」のみで、単なる賞賛の意味だけでなくその言葉が向けられた側の性別が限定されている言葉なのです。また男性に対して使うのは「誤り」になり、場合によっては「素晴らしく女々しい」という皮肉の意味で使われる場合もあります(LGBTQの普及により言葉の性差がなくす方向に進んでいるので”いまのところは”なのですが)。ちなみにこれは”ニュアンス”ではなく”意味の違い”になります。

その他にも主語の省略や、逆説が二重になる場合の誤訳など、グーグル翻訳の精度が以前と比べ格段に上がったとはいえ、改善の余地はまだまだあるということがわかります。

ニュアンスの罠

f:id:toriaezublog:20170921174543j:plain

 日本の新聞や雑誌の記事と、英語圏で書かれた英文記事の大きな違いに「記名かどうか」ということがあります。日本の記事でよく見かける「無記名」や「〜編集部」など書き手の存在をボヤかすことは英文記事ではほとんど見かけません(速報やレースレビューなどは別)。

記名記事である理由としては「事実への責任の所在を明らかにする」等いろいろあるのですが、その一つに「記事に書き手の主義主張や立場が現れるため」でもあります。

例えば「スカイの人海戦術」に対し否定的な記者が書いたフルームの記事と、「スカイの合理性は良し」という人の記事ではフルームの描き方が変わってきます。そしてその目線は文章の中に暗喩や同じ意味だけどニュアンスの異なる単語などに現れます。しかしグーグル翻訳を使って読む日本語では、その主張の異なる二人が描くフルームの差が読み取りづらくなってしまいます。

このように日本語だったら当たり前のように読めるニュアンスが、グーグル翻訳から吐き出された日本語では消えてしまう場合があるのです。

正直、スポーツの記事に記者の主義主張など関係ないだろうと思っていたのですが、先日の「キャノンデールの新スポンサー撤退」に関する記事において「純粋に応援している」記事や「大枠では応援しながらJV個人に対しては批判的」な記事、「クラウドファンディングについてのみ疑問を呈している」記事など多種多様でとても興味深い体験でした。

不完全を信頼できるか

自分が思うグーグル翻訳における最大のデメリットは「グーグル翻訳の日本語を信頼することができない」ということだと思っています。

日本語として違和感のある(不自然な)文章を、どこまで信頼し自分に取り入れることができるのか、ということです。

文章を読むというのは「文章を頭の中でビジュアル(画)化する作業」だと考えています。しかしそこに「文章に対する疑念や不安」という余計な感情が入ることにより、受け取る情報量は同じでも、自分の中に知識として定着する情報量は少なくなってしまうのです。

例えば「日本語の記事・自力で読解した英文記事・グーグル翻訳で読んだ英文記事」の三つがあるとします。そのうち一番知識として定着するのはどれかというと、「自力で読解した英文記事」です(長いこと英語を学び教えている経験からすると)。その理由は単純に「その記事と接した時間が最も長い」からであり、わからない箇所を調べながら読み進めていくことによって画が徐々に完成していき、その時間がかかるほど記憶に残りやすくなるからです。

わかりづらい説明になってしまいましたが、グーグル翻訳による違和感(疑念)のある文章を、自分の中で「事実」として信頼できるかは、情報を得るという行為においては大きく影響してくるということです。

しかし一方で、その疑念を埋めるほどの知識がある場合や必要な情報だけ抜き出すような場合は問題はないとも思っています。それ以外で情報の裏付けをすればいいワケなので。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以上がグーグル翻訳のメリットとデメリットでした。

ざっくりとまとめると「グーグル翻訳は便利だけどまだ自力読解にはまだ及ばないから使い方に気をつけようね」ということです。

個人的な感覚として「近い未来に自動運転自動車が普及するはずだから運転免許証なんていらない!」と「自動翻訳が発達するから英語の勉強なんてする必要ない!」は、同じぐらいの未来だと思っているので、無理して英語の勉強する必要はないとも思ってます。そりゃ読めたほうが楽しいけどね。

 

 

(ここから蛇足)

で、グーグル翻訳に頼らず自転車ロードレースの英文記事を読むためにはどうすればいいのだ!ということなのですが、「ひたすら読む」が手っ取り早い方法です。「知りたいけど情報が英文記事にしかない英文記事を読む」がモチベーション的にも良いと思いますし。

こちらは一例 ↓

記事を印刷してわからない箇所にマーカー引きながら読む(一回目)、頑張ってその単語や熟語を予想しながら読む(二回目)、マーカーした箇所を調べながら読む(三回目)、その記事の内容とそれに対する自分の意見を誰かに伝えるつもりでまとめる(書いてもいいし喋ってもいい)、三日後に(真っ白な英文で)同じ行程を再度行う、一週間後にもう一度行いわからない箇所があれば単語帳として書き残す、一ヶ月後にもう一度読む。

これを繰り返せば三ヶ月後には「普通」に英文が読めるようになっています。単純に語彙が増えるからというのもあるのですが、英文記事を読む「習慣と体力」がつき、何より「英文を読む」という行為に対する心のハードルが下がるからです。

これを行えば「TOEICの参考書」なんか買わず、自転車ロードレースの英文記事を読むだけでリーディングの方はグングン上がっていきます。欧州サッカーの記事だけでTOEICのリーディングが満点近く取れた生徒さんがいるので保証します。(おかげで自分もサッカーめっちゃ詳しくなった。)

これ筋トレと似ているんですよね。筋肉をつけるには「筋トレの習慣」をつけ、効果を上げるにはトレーニングや栄養についての知識をつけることが必要です。それを自分で調べるのが面倒くさければジム(英語講座)に行って教えてもらえばいい、という点も同じ。

しかし「毎日仕事でヘトヘトなのだから、そんなんできないわ!」というのが本音だということこともよーーーくわかります。だ・か・ら、自転車ロードレースなどの趣味を英語化するのが一番手っ取り早い方法だと思うのです。

「努力しているつもりはないのだけど、気づいたらいつの間にか読めるようになっていた!」が理想ですからね。

 終わり。